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剽窃禁止(FPRn8712546-1) 《おうとうしゃの本棚から アーカイブ》 「石切り山の人びと」 偕成社 桜冬舎の本棚から 8 ![]() 竹崎有斐 著、北島新平 絵、「石切り山の人びと」 偕成社
まず、出版社の紹介文を引用。
「野うさぎ村の戦争」(植松要作 著)と並ぶ、「桜冬舎の本棚」 きっての名作。 この欄で推奨してきた本とは違って、初めから終わりまでストーリーにぐいぐい引き込むタイプ。大人の筋と子供の筋とが組み合いながら どちらも骨太に進んでゆく。そして後半から終盤へと進むほど ますます中身が濃くなり、背後の状況や意味を探して 「立ち止まり 立ち止まりして」読んで行く 読書になるので 読み応えも十分。その迫力も凄い。 「小学高学年から」となっているが、子供に目隠しをするような甘さは一切ない。戦時下の権力への抵抗と、やがて社会の崩壊に向かう 大人でも改めて胸を突かれる現実にまで、避けることなく 前半の痛快さの延長で連れて行ってくれる。合間に現れる重みのある分析も見事。今の児童書の範疇ではとらえきれない 貴重で真剣な読書体験になること必至だ。 鍵になるのは、単に「都会化が進んでいない時代」ということではない。以前から、「生活が生産の場から離れていない内容の本を・・・」と奨めてきたが、この本は その生産の場そのものが大きなスケールで描かれている。その生産手段が ことごとく権力に呑み込まれ破壊されて行く 悲しい歴史の現実が 子供にもありありと理解できる。そして上り詰めた最後、たった三行の短い段落が 万感胸に迫る。 そしてもう一つ。子供をここまで連れてゆけるのは、まさに母語の力。施 光恒さんが「英語化は愚民化」と言ったのは まさにこの現実なのだろう。(カレントコラム、「思考言語への第一歩」の下注を参照)
最後に 大石真氏の解説文から引用。 |
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