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剽窃禁止(FPRn8712546-1) 《おうとうしゃの本棚から アーカイブ》 「生きる」劉 連仁の物語 童心社 桜冬舎の本棚から 9 ![]() 森越智子 著、谷口広樹 絵、「生きる」劉 連仁の物語 童心社
まず、本の表紙の紹介文から
このサイトの別のページで、「 ファンタジーものは、創作論(文学論)的には高く評価された作品でも 必ずしも中学生に良いとは限らない。(まともな本であれば)そもそも文を読みとること自体が すでに高度に創造的・想像的な行為だからだ。」 と書いたが、これほどまで現実に迫る児童書に出会ってみると、あらためて 洞察と筆力こそが子供を創造・想像に駆り立てるのだと合点がゆく。 書く「目的」と「相手」 そして著者自身の「役割」。これらを見据える土台作りが しっかりしているから、これほどの意義ある作品が作れるのだろう。 はて、どんな立場で紹介できるのか。 著者の意志を 推測した上で その流れに途中から参加するしかない。こんなことも書かなければならないほど 創作の核心を突いた名作だ。
むき出しの「奴隷制」が、こんなに身近に そしてこれほど多くの所に存在していたという事実。そしてそれが 隠され消され、もう誰も居ないという現実。でも、それで終わらせるのは厭だ。一人を、そして幾万人を踏みにじったままで・・・・・。
歴史関連のノンフィクションの児童書は、ともすると作品の後半 著者自身の思索の質が試されて残念な読後感に終わることも多いが、この本は まったく その逆だ。
内容は深いが、文字の大きさや行の幅 さらには注釈のタイミングまで十分に配慮されているので、子供が読んでもまったく無理がない。「戦争」には今・現実の 限りなく多くのテーマが集約されるが、劉さんの独白をはじめ随所に それらを子供に確実に伝えようとする真摯な表現が溢れ 思わず息をのむ。
ある国民と他の国民が どれほど憎み合っても戦争など起こせない。それどころか そこまで激しく憎み合うことすらあり得ない。それでもなお、戦争は 「国と国との憎しみ」の形を借りて造り出される。「国」とは何か「社会」とは何か。
同じ題材を扱った本としては、早乙女勝元著「穴から穴へ13年」(草の根出版会)も大変参考になります。 |
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